うぅ……。
「やっぱり寂しいよぉ……」
さっきまではあんなに笑顔でいれたのに、みんなと別れた途端、一気に寂しさと悲しさが込み上げてきた。
それに………
高校卒業と同時に、お父さんとお母さんは家に帰ってくることになっている。
イコール、楓がいなくなっちゃう……?
“卒業”という文字が頭をよぎる度に、その事ばかりを考えてきた。
これで、楓までお別れになっちゃったら……ほんとに寂しすぎるよ……。
家まで続く坂道を登りながら、あたしは涙を堪えることが出来なかった。
「そんな泣くなって。ほんとお前は泣き虫だな?」
あたしよりも頭ひとつ分大きい楓が、あたしの顔を覗き込んで、頭をポンポンと撫でる。
「だってぇ……」
あーちゃんや愛チャン、爽に瀬川クン。
みんなと離れることがこんなに悲しいことだなんて、思ってもなかったんだもん。
それに……楓は、もうあたしと暮らせなくなること、悲しいと思わないのかな……?
茶色のサラサラした髪をなびかせて歩く楓を見上げてそんなことを思った。
「ほら、着いたぞ」
楓にそう言われて顔を上げる。
なんか……あっという間に家に着いたな。
ていうか………
「……お父さんとお母さん、帰ってきてる」
家のカーポートに止まる二台の車。
「一台は鈴さんの車だな」
どうやら家には、お父さんとお母さんと鈴さんがいるらしい。
窓の外から楽しげな笑い声が聞こえてくる。
「な、なんか緊張する……」
電話では何度か話してたけど、会うのはかれこれ一年半ぶりくらいだ。
お父さんもお母さんも元気にしてたかな?
「取りあえず、中に入ろうぜ?」
そう言って、楓が家の玄関を扉を開けた。


