その手紙を握りしめながら、少し複雑な気持ちになった。
ライバル的な存在であった柚月サンと、これからは争うことがなくなるんだと思うと心が軽くなる。
だけど、それと同じくらい寂しい気持ちも多かった。
“友達でいてくれたら嬉しいな”
柚月サンの屈託のない笑顔が脳裏に焼きついて離れない。
もちろん……楓への気持ちを譲る気はなかった。
だけど本当は、柚月サンと争うようなことはしたくなかったんだ。
こんな形じゃなくて、普通の友達という関係でありたかった。
これからは、そうなれるのかな……?
あたしは心の中で何度も柚月サンに謝って、感謝した。
ごめんなさい柚月サン……ありがとう。
それからというもの、ごく平凡な日々が続いていた。
そして、あたしの進路は
ー「あたしの旅館に就職すればいいじゃない♪」
と、鈴さんにお薦めしてもらったのと、
ーー「あら、それはいいわね。 穂香の着物姿、あたしも見たいわ~♪」
なんて言うお母さんの呑気な言葉をきっかけに、あたしは鈴さんの旅館に就職することにした。
でも、やっぱり何も努力しないまま鈴さんに甘えるのは嫌で……
旅館に就職しても恥ずかしくないように、料理について学ぶため専門学校で必要な知識を身につけようと思っている。
この3年の間に、色々なことがあった。
初恋の楓と10年ぶりに再会して、一緒に暮らすことになって……
愛チャンや爽、柚月サンに出会った。
悲しいことも苦しいこともたくさんあった。
だけど、それ以上にとっても幸せな日々だった。
それは紛れもなく、ここにいるみんなのおかげ。
そして……楓のおかげ。
そんなあたしも春からは専門学生になるんだ。
まだ全然、実感が湧かない。


