『大体、優勝者と決まったお姫様でもない人とキスするなんてルール違反………』
「ルール違反?」
今度は楓が司会者の言葉を遮った。
「確かに、俺はお姫様とキスするって言ったけど、誰も優勝者とキスするは言ってねぇよ?」
『はっ?』
司会者が目を丸くして楓を見つめる。
今のあたしも、司会者と全く同じ顔をしていると思う。
……というか、この体育館にいる人全員がそうだろう。
「大体、こんなコンテストやる必要ねぇだろ」
ーー『そんなこと、やる必要ねぇだろ』
あたしに放った楓の言葉を思い出す。
……あの時は、あたしと柚月サンが勝負なんてする必要ないって意味かと思ってた。
でも、その言葉に込められた本当の意味は……?
「ひゃあ……っ!」
すると突然、体が宙に浮いたと思ったら楓に抱き上げられた。
「キャーーーーーッ!!!」
体育館に、いつもと変わらずの黄色い声援がうるさいくらいに響き渡る。
でも……今、一番そう叫びたいのはあたし。
あたし、楓にお姫様抱っこされてる……??
「な、ななな………」
この状況を読み取った途端、パニック状態に陥ったあたしは、口を魚みたいにパクパクしたまま何も言えなくなった。
密着している体から、楓の胸の鼓動がはっきりと伝わってくる。
ちょっと……ドキドキ、してる?
「俺にとって、お姫様はこのコンテストの優勝者じゃねぇよ?」
あたしを抱いたままそう言う楓の表情は、王子様の優しい顔ではなく、いつもと変わらない意地悪な笑顔。
楓……もしかして……
すると、意地悪な王子様は
「俺にとってのお姫様は……コイツだけ」
あたしに再び、極上に甘いキスを落とした。


