観客も司会者も、そんなあたし達を呆然と見ている。
シーンと静まり返った館内はまるで、あたし達しかいない世界みたい。
周りから見られているなんて羞恥心は、楓のところに向かう途中に忘れてきた。
「楓っ、ごめんね……?」
あんなこと言わせて。あんな悲しい顔させちゃって……。
「あたし……楓のこと、いっぱい傷つけた……」
本当にごめんなさい。
そう言って頭を下げた。
けど、楓からは何の応答もない。
不思議に思って顔を上げると、楓はあたしを見下げながら顔をしかめていた。
その表情はどこか不満そうで。
「俺が聞きたいのは、そんなことじゃないんだけど?」
「えっ?」
な、なに?
どうゆうこと……?
首を傾げて楓を見つめると、あたしの顔は楓の大きな両手によって挟まれた。
涙で濡れたあたしの頬に、楓の温かくて優しい体温が注ぎ込まれる。
「さっき言ってた言葉、もう一回言って?」
「え、だ、だからそれって……」
それって何?
そう聞こうとしたのに、楓があたしに顔を近づけてきたから何も言えなくなった。
ふわりと楓の甘い香水の香りが鼻をくすぐる。
バクバクと、心臓が今にも爆発してしまいそうなくらい脈を打ってる。
そして、あたしの5センチ程先にあるキレイな唇が静かに動いた。
「……俺のこと、どう想ってるって?」
そしてニヤリと口角を上げる。
あたしはその言葉の意味をようやく理解した。


