「また、来てたね。あの小悪魔」

愛チャンが、あたしの机に頬杖をついて、校門を見ながらボソッと呟く。

「なにを考えてだか。あの小悪魔は」

あーちゃんは、深いため息をつくと、飲み終えた紅茶のパックをグシャリと握りつぶした。

あれから、さくら祭りでのことを2人に話したら、2人は蓁宮椿姫サンのことを“小悪魔”と呼ぶようになった。

まあ、確かに小悪魔なんだけどね……。

楓は蓁宮椿姫サンのことどう思ってるんだろう……。

「穂香、大丈夫だって!」

「そうよ。王子だって穂香を捨てるようなマネしないわ」

あたしは元気なく頷くと鞄を抱えて教室を後にした。


あたしは深いため息をつきながら桜並木をトボトボと歩く。

ヒラヒラと舞い落ちる桜は、いつもの見慣れた道を飾るイルミネーションのようだった。


ーードンッ

瞬間、誰かにぶつかってしまって、あたしは勢いよく顔を上げる。

「あっ、ごめんなさい……」