「もう、1年が経つんだ……」


シーツにくるまり、楓の温かい腕に包まれながら呟いた。


思い返せば1年前。


楓はあたしを、鈴さんの旅館へ連れて行ってくれた。


いろんな観光名所に行って、美味しいものをたくさん食べて、


そしてその日……あたしと楓の心が通じ合った。


“好きだ”って言われた時は、飛び上がるほど嬉しくて仕方なかった。


そんな時から、もう1年が経つんだ……。


時が経つのは早いものだ。


「……穂香、まだ気付かねぇの?」


「へぇっ?」


思い出に浸っていたあたしは、楓の言葉に拍子抜けした。


まだ気付かないって……一体、何の話?


首を傾げたあたしに、楓は困ったように微笑む。


そして、あたしの左手を握って、シーツの中からスッと出した。


あたしに見せるように、自分の顔の横であたしの左手をちらつかせる。