「今日、南と桜田がC組に来たぞ」


「えっ?」


あーちゃんと、愛チャンが……?


最近、愛チャンとはあまり接触を取り合っていない。


なのにどうして?



「穂香のことが心配だって、俺に様子を聞きにきたんだよ」


楓の言葉が頭に響く。


体調が本調子じゃないからかな……


頭がぼーっとする。


久しぶりに耳にした“桜田”という名前に、思い出したくない記憶を引っ張り出された。



――『あたしね、その言葉にはたくさんの意味が込められているんだと思う』


そう言って、愛チャンが流した涙。


その後に見せた、どこか影ある笑顔。


きっと無理して笑っていたのかもしれない。



これはあたしの憶測にしか過ぎないけれど、
確かにあの時、愛チャンはまだ楓のことが好きなんだと確信したんだ。


昔は、たくさん嫌なことをされた。



でも、愛チャンは


――『楓クンと絶対幸せになってね』


最後にはとびっきりの笑顔で微笑んでくれた。