「お前とは、二度とお化け屋敷は入らねぇ」
そう吐き捨てて、立ち上がる楓。
その足は、あたし達の真っ正面にあった自動販売機へと向かった。
お金を入れて、ボタンを押した様子。
ここからじゃ、何を買ったかまでは見えない。
「ほらよ」と、戻ってきた楓は、あたしにサイダーを差し出した。
「あ、ありがとう!」
プシュッと音をたてて開けて、サイダーを口に流し込む。
刺激的な炭酸と、ほんのり甘味な味が口の中で広がる。
「……ぷはぁ~!美味しいぃ!」
「サイダーでそんな喜んでくれるヤツはきっと、お前くらいしかいねぇな」
そんなあたしを見た楓は嬉しそうな顔を浮かべて、ブラックコーヒーを口に流し込んだ。
なんだかんだ言っても、やっぱり優しいよね。楓は。
「お前みたいな珍しい女は他にいないもんな」
め、珍しいって……
あんまり素直に喜べない。


