クリタは、席に座ると、パッと後ろを振り返った。 そして、私を見て、優しく笑いかけてくれた。 こんな優しさがあったんだなぁ。 忘れていたのかなぁ。 それとも、触れた事がなかったかなぁ。 その正体を、記憶をたどり探した。 でも、見つからなかった。 優しさにふれて、堪えていた涙が溢れ出した。 もう止められない。 誰にも気付かれないように、ハンカチを顔に当て、喉に声を押し込めて、沢山の涙を流した。