部屋のドアが開き、ある人物が入ってきた。


「紗耶香ちゃん!」


 藤堂がパッと目を輝かせ、大きな体を椅子の上でワンバウンドさせる。


 椅子がギシッと悲鳴を上げて、新田はまたため息をついた。


 紗耶香は藤堂に視線をやり、

「あ、刑事さん」

 と一言。


 どうやら、名前は覚えていないらしい。


「紗耶香どうしたの、式の途中だろう?」


 栗田が、紗耶香へ向けてそう言った。


「えぇ。でも、なんかすごい悲鳴が聞こえてきたから……。

栗田君、どうかしたの?」


 腕のさすっている栗田へ、紗耶香が不安げな表情を浮かべる。


 栗田はチラリと藤堂を見てから、

「なんでもないよ」

 と、微笑んだ。