男が一人、隅っこのテーブルで文庫本を開いている姿は異質で、珍しいものを見るように女子中学生たちは声を潜めてささやきあった。 しかし、栗田はそんな事など気にも留めず、一心に活字を目で追っていたのだ。 「何、読んでるの?」 その時の栗田が、何となく今の自分を重なり合って、沙耶香は話かけていた。 驚いたように顔を上げる栗田。 少し太めの体に、特徴のない顔。 一目ぼれなんて、滅多にされないだろうし、女の子にそこまで好かれるとも思えないような外見だった。