ここでモタモタしているよりもさっさと山を越えて戻ったほうが懸命だ。 そう思い、歩き出そうとしたときだった。 沙耶香の目が見慣れた顔をとらえ、足が止まった。 「栗田君?」 その見慣れた顔へ向けて、沙耶香が声をかける。 田んぼをはさんで向こう側にいる栗田が驚いたような表情をして、それから手を振ってみせた。