「待って、ここにお姉ちゃんの魂は見えないの?」


 沙耶香が、思い出したようにネコの服を引っ張って言った。


 この山へ入る前、あるはずのない携帯電話が落ちていた。


 あれは昌代の仕業ではないのか?


「そのことだが……」


 ネコは右手の目をギョロギョロと泳がせ、また口を開いた。


「君のお姉さんの姿は見えないが、もう一人、写真で見たことのある顔がある」


「誰?」


 沙耶香が聞く。


 ネコは大きく息を吸い込んで









「戸部奈々子」


 と言った――。