その日も、私は図書室で勉強をしながら、紳君が帰るのを待っていた。

いつのまにか日が短くなり、辺りに夕闇が近付く頃、紳君が数人の友達と一緒に歩いて来るのを窓越しに見つけた。

少々暗くたって、ちゃんと紳君を見つけられるのは、きっと愛の力よね?

私はおもむろに鞄を持ち、少し早足で中庭へ出る。

前みたいに、慌ててダッシュはしない。

あの日、つまり紳君から『好きだよ』と言ってくれた日の翌日から、慌てて行かなくても、紳君は昇降口の前で待っててくれるから。

本当は、紳君は前から私を待っててくれたらしいし、走りたくてもテーブルに強打した腿が痛くて走れなかった、という事情もあったんだけど。