私には、それが信じられなかった。 つい最近まで、触れたら今にも壊れてしまいそうな、この儚い少女は、遠い雲の上にいた。 私には、眺めることすら許されないような、お姫様だった。 特別な境界線が引かれ、世界が違うと思っていた。 相島まりあ、という人は、ずっとそんな存在だった――。 なのに。 今、彼女は目の前にいる。 手をめいっぱい伸ばせば、届きそうな、その場所に。 ――なぜ、まりあは突然、私の前に現れたのだろう。 いや、ずっと前からまりあはここに居て、偶然私がここに来たのだ……。