天国への階段 ―いじめ―




「……ね、ねえ!」
 

思い切って声を出すと、英子は、


「あ?」
 

と、濁点がついたような音で、そう返した。
少したじろいだけれど、なぜか私は、いつもより勇気があった。ひるまずに、言葉を続けた。



「……どうして……わ、私をいじめるの…?」


言えた!と、心の中で喜んだ。
そして、キュッと唇を噛む。
どんな返事がくるのか、すごくドキドキした。


英子は、はじめは驚いて目を見開いたが、すぐに眉間に皺を寄せた。


「んなの、どうでもいいだろ。てめえの分際で気安く話しかけんじゃねーよ。虫唾が走る」


「……どうでもよくないっ」
 

咄嗟に、はっきりと、大きな声が出た。
自分でもびっくりしたけれど、もっと驚いているのは英子だった。普段の私は、小さくてボソボソとしか話さないからだ。