「斉藤、お前、最近どうだ」 担任の吉木に呼ばれたかと思っていってみたら、いきなりそう言われた。 「……?」 「その、クラスでは大丈夫か。 いや、大丈夫なわけないな。 転校とかは考えていないのか?」 吉木の言葉にうんざりした。 吉木は臆病で、区議会委員の親を持つ麗子たちには逆らえないのだ。 所詮、教師なんてこんなものだ。 ただの他人。 生徒と教師の間には信頼も尊敬も何も生まれない。 そんなことない、なんて言葉は聞きたくもないほど、 私のいるこの世界はそうだった。