「みなみ、まだぁ?」
意識が朦朧としていた中、その一声で今自分がいる場所をきちんと認識した。
みなみの“み”が、海結の“み”と重なって、一瞬、自分が呼ばれた気がした。
それに、語尾を伸ばした話し方で、麗子に呼ばれた気がしたのだ。
「さや、ちょっと待ってよ。トイレットペーパーが……」
「ないの?」
「いや、ある。ああ、もう! 上手くガラガラできない……」
「はあ? 何それ、ウケるんですけど」
私は二人の会話を聞いて、昔を思い出した。
くだらないことに笑って、つまらないことでケンカして、それでも笑い合った楽しい日々。
……ここ最近、昔を思い出すことなんてなかったのに。

