「頭冷やせよ」
英子の声が水の合間から聞こえてきた。
「ついでにぃ、綺麗にしてあげるー」
麗子みたいな話し方の亜未の声がしたと思ったら、上からモップとほうきと雑巾が降ってきた。
モップは亜未が柄を持っているみたいで、しゃがみこんだ私の頭を繰り返し殴った。
「ゴキブリ菌、とれなぁい」
そう言うと亜未は、モップを二つに増やし、さっきよりも激しく私の頭を殴った。首筋をやられるとかなりの激痛が走る。
汚れた水が手のひらを伝う。
それをぼんやりと眺めていると、心まで汚れてくる気がした。
でも、どうでもいい。
痛いけど、辛くない。

