「昨日、帰る時に、こっちに来る姿を見たの。 今日もそうだったから、何してるのかな、って思って……」 階段のおかげで、必然的に私が万里香を見下ろす形で、少し偉くなった気分だった。 麗子が私に対する思いは、いつもこんな感じなのだろうかと、ふと思う。 「教えてあげようか。 私がここで、何をしているか」 わざと、口元だけで笑う。 万里香がうろたえて視線を逸らせた。 万里香は弱いね、と言いたくなった。 こんなにも弱い私にうろたえるのだから――。