「あのね……」 まりあが口を開く。 けれど、しばらくたっても、「あのね」の次の言葉がない。 不思議に思ってまりあの顔をチラリと見ると、まりあは視線を落として階段を見つめていた。 「ま…りあ……?」 私がそう言うと、まりあはハッとしたように顔をあげ、バツが悪そうに笑った。 「ごめん。やっぱ、なんでもない」 「そう…なんだ…?」 あきらかに途中で言うのをやめた言葉が、気になって仕方がなかった。 けれど、問い詰めるようなことはできない。 こっちから話しかけることすらままならないのに…。