睨みつけるように、まじまじと見ている私のことなどお構いなしに、男は状況にそぐわない優しいトーンで話し続ける。 「立てる?」 ゆっくりと、ゆっくりと、地面に立たされる。 誘拐犯とは思えないくらい丁寧な動き。 「な、何なの? 殺すの?」 やっぱり怖い。 「俺は、人は殺さない」 どの口をしてそんなことを言う。 「必要がなければ」 ……やっぱり。