ちゅっと湿った音がした。 小さく、一つ。 雨で濡れている唇は冷たい。 リクの、そして私も。 リクの唇の近くで私はささやく。 誘っていると受け取られても仕方がない口調で、裏腹な言葉。 「その唇を温めているだけだよ」と。 ただ、それだけ。 助けてくれたお礼、一回分。 それ以上の意味はないから。