彼女の名前は

アリス。


生まれてから
5歳までの
記憶がない彼女は

もう16歳になっていた。


普通の女の子なら
ちょうど一週間後に
魔法学園に入学する。


けれど、アリスには
そんなお金はなかった。


アリスには
両親がいない。


トゥーンの人々に
支えられながら

いつも一人で
暮らしている。


だから毎日深夜になると、
この丘に来て月を見る。


「…月はずるいな。いつも誰かが見てくれているでしょ?寂しくないね」


アリスは月を
じっと眺めていた。


けれども月は
彼女に何も
言ってはくれない。