そんなこと分かってるよ。
だってわざとそうしたのだから。
気づいて欲しかったからわざと言ったんだよ。
「…わざとだよ…そんなの」
俺は小さく笑って満里奈の手をほどいた。
そして教室から姿を消した。
「あの!!名前教えてください!!」
すると満里奈がいきなりこう叫んだ。
俺はビックリしたが名前を教えてるのには抵抗はなかった。
だから自分の名前を教えた。
「矢吹俊介だよ。じゃあね」
「あしたのジョー?」
満里奈は首を傾げて一礼をして足早に教室に入って行った。
俺は最後の言葉がどうしても気になって仕方がない。
「あしたのジョーって…矢吹しか当たってないし…変なヤツ…」
藤原満里奈は俺の心の中に勝手に入ってきて、不思議な力で傷ついた心を癒してくれた。
教室に戻り、渓斗の方を見るとまだ周りには女の子で群がっていた。
それを見て「飽きないな」と思ってしまう。


