しばらく何もできなかった。
すべての音を消したかった。
ここから消えてしまいたかった。
瑠花は取り囲む男子に笑顔を振りまいていた。
その姿を見て腹が立ってくる。
朝の俺の助けは必要なかったのかもしれない。
瑠花は恋愛したいのだから勝手にすればいい。
「あの…どうかしましたか?」
すると後ろから声が聞こえてきた。
「はい?」
俺はゆっくり後ろを見ると誰もいなかった。
朝から怪奇現象?
やめてよ、怖いな。
「あの…ここです!下!!」
再び先ほどの声が聞こえてきた。
俺は言われた通り視線を下に向ける。
そこには俺を見上げる女の子が立っていた。
「小さ!!」
「失礼ですね。これでも去年より1センチは伸びたのです。今147センチです」
自信満々にそう言う彼女はどこかで見覚えのある顔をしていた。
黒い長い髪に透明感のある肌。ほんのりピンク色の頬。
「藤原満里奈…さん?」
これが満里奈との出逢いだった。


