瑠花を起こすのは俺の仕事。
誰にも譲らないよ。
「あ、俊介!」
「なに?」
瑠花の部屋のドアノブに手を掛けたとき、急に引き止められた。
もしかして「俺の娘はお前にはあげない」とか言われるんじゃ…
いや、ドラマの見すぎ?
「たぶん今日の瑠花、すごい不機嫌だと思うから気をつけてな」
瑠花のお父さんの口調がまるで飼い犬のことの言っているようだった。
まぁ確かに瑠花は怒ったら獣のように怖いのだけど。
「瑠花?入るよ」
そーっとドアを開けて獣に変身していないか確認する。
ピンクと白に統一された部屋は日本ではないようだった。
どこかのお城みたいだ。
今日から着るセーラー服が掛けられている。
化粧台に並ぶたくさんの化粧品。
モコモコのパステルピンクの絨毯。
ほのかに香るフローラルの香り。
瑠花の部屋だと実感した。
足音を消して中に入っていく。承諾を得て入っているのに何故か緊張してしまう。
瑠花だからだ、きっと。
ベッドに向かうと、そこには気持ち良さそうに眠る瑠花の姿があった。
その瞬間、きゅんと胸が締め付けられた。
瑠花、起きてよ。
いや、やっぱりいいや。
だから触ってもいい?


