当たり前なことを当たり前だと思わずに、「いつもありがとう」と感謝しよう。
目に映る世界が、手に触れられる物が、消えてなくならないうちに。
俺は生まれてきて良かったと強く思う。
だって瑠花に会えたから。
きっと神様は瑠花に出逢って欲しくて俺にこの試練を与えたのだろう。
このくらいどうってことないさ。
いつか神様に会ったら笑ってやるよ。
「…もし俺が渓斗の立場だったら俺も渓斗と同じことをすると思う」
「え?」
「ずっと黙ってると思う。二人が幸せなら見守ってやりたいって思うし。だから渓斗は間違ってないよ。黙っててくれてありがとう」
俺は渓斗を見上げて小さく笑う。
渓斗は俺の言葉を受け止められないのか下を向いてギュッと唇を噛んだ。
いいんだ、俺は。
平気だよ、全然。
ごめん、ちょっと嘘ついちゃった。
本当は平気じゃない。
だけど平気なフリをしなくちゃいけないと思ったから…
涙はもう流さない。
俺は立ち上がりスポーツバックを持った。


