すると遊心は背中を向ける私を後ろからぎゅっと抱き締めた。
久しぶりに感じる遊心の温もり。
あの頃となにも変わっていない。
だけど視界に映ったのは左手薬指の結婚指輪。
結婚したのは嘘じゃなかったのね。
「知らなかった…紗智子のお腹の中に子供がいたこと…俺って馬鹿だよな。気づきもしないでごめん…。紗智子が許してくれるなら俺はお前とこの子の傍にいたい。父親らしいことはしてあげられないけど近くで見守りたい…お前を幸せにしてあげられなくてごめんな…本当にごめん…だけど…」
遊心は泣きながら私にこう言った。
「…産んでくれてありがとう」
あの声で、あの温もりで、あの優しさに私は包まれる。
そして私は間違ったことはしていないんだとそう神様が言ってくれたような気がした。
遊心にすがり付くのはこれで最後にしよう。
遊心は私に幸せを与えてくれたのだから。
私を一人にしないように、私に新しい命をくれたのだから。
遊心がいなかったら俊介に出逢えなかった。
今なら遊心に「ありがとう」と素直に言えるだろう。


