さらに強く、北風が俺の体に当たった。
いや、これは北風ではなかったかもしれない。
もしかしたら、神様のお告げかもしれない。
なぜ彼女がそんな言葉を言ったのか分からなかった。
理由は何にせよ、なぜ俺に言ったのか。
俺の答えに不服だったのか。
それとも彼女は何かに悩んでいるのか。
全身が震えた。
寒いからではなく、目の前にいる彼女に恐怖を覚えた。
逃げ出したいと思い前を見ると、道が歪んで見えた。
俺は今迷路にいるのか?
出口が分からない。
そんな錯覚に陥っていた。
「…おばさん」
「別に何でもないのよ。気にしないで。俊ちゃんが幸せならそれでいいのよ」
スーパーの買い物袋の擦れた音が廊下に響く。
彼女は俺の横を通りすぎ、部屋の中に消えていった。
かしゃん、とドアが閉まる音と同時に呪縛から解き放された気分になった。
ふいに体が軽くなり、歪んでいた道も正常に戻った。
なぜあんなことを言ったのだろう。
気にしない方が良さそうだった。
…このときは。


