「…夕飯の準備するわね。今日は俊介の大好きな唐揚げだから」
「うん、分かった。それまでに宿題終わらせるよ」
そう言って母さんは部屋から出て行った。
カーテンから覗く世界の色が黒に変色していく。
このどんよりとした晴れない気持ちは何だろう。
悔しい…悔しい…悔しい。
渓斗に「応援する」って言われたのに…
「ずっと味方だから」って笑ってくれたのに…
やっと心が軽くなったのに…
出口に向かう道は遮断された。真っ暗な道に佇むのは、無力な俺だった。
勉強机の一番上の引き出しを開ける。
そこにまだ使っていないノートが一冊。
俺はそれを広げ、シャープペンシルを手に取った。
素直な気持ちの居場所はここにしかなかった。
この小さな部屋の中に唯一存在する、自分の気持ちだった。
“俺は瑠花が大好きだ”
許してください。
ここにだけは素直な気持ちを記させてください。
あとは、心の中で眠りますから。


