テストで悪い点数を取ってもこんな表情はしたことがない。
何かあったのかな。
「…どうかしたの?手洗いうがいはちゃんとしたよ?」
すると母さんは俺の手を握り、真っ直ぐこちらを見た。
呼吸を落ちつかせながら。
「…ねぇ、俊介?」
お母さん、なぜこの時こんなことを聞いたのですか。
俺は産まれてきて良かった人間ですか。
「な…に?」
力強くなっていく母さんの手。俺は母さんを見失わないように見つめる。
「俊介は瑠花ちゃんのこと好きじゃないわよね?」
遠くの方で何かが弾けた。
シャボン玉?
風船?
ううん、違う。
俺の運命だった。
いきなりのことで何て言ったらいいか分からなかった。
どうしてこんなことを聞いたのか。
どうして瑠花の名前が出てきたのか。
渓斗に言われた通り、俺の行動は分かりやすかったのか。
答えはたくさんあった。
でもこの答えはすべて間違っていた。


