はじめて見たかもしれない。
子供のように泣くのを我慢しているかのようだった。
俺は部屋を明るくするために電気を点ける。
急に明るくなった部屋に驚く母さん。
そして慌てて何かを引き出しの中にしまった。
俺はそれを見逃さない。
「母さん…何やってるの?部屋真っ暗にして」
「な…何でもないわよ。帰ってきてたの…ただいまくらい言いなさい」
そう言って、何かをしまった引き出しの鍵をガチャンと掛ける。
それは三段くらいある物入れの一番上の段だった。
そういえばそこはいつも鍵が掛かっていたっけ。
小さい頃から不思議だった。
何が隠されているのか。
通帳かもしれないし、俺の今までの成績表かもしれない。
家のことを管理しているのは母さんだったから聞きたくても聞けなかったのだ。
母さんは立ち上がり、俺の横を通る。
俺はその時、聞いたのだ。
「ねぇ、俺って血液型ってないの?」


