悲しいわけではないのに。
苦しいわけではないのに。
なぜ涙が溢れてくるの?
瑠花を見ていたら何だか涙が出てきた。
それくらい好きということなのか。
やっぱり瑠花が誰かのものになるなんて想像がつかない。
俺の隣にいて欲しい。
怒っていてもいいから。
笑ってくれなくてもいいから。
我が儘でいいから、泣き虫でもいいから。
ただ隣にいてくれさえすれば俺は幸せだ。
「瑠花には特別に教えようかなぁ。」
「なにを?」
「俺の好きな人…」
深呼吸をひとつ。
そしてブランコから立ち上がり、瑠花の方へ歩み寄る。
見下ろすとそこにはキョトンとする瑠花。
上目遣いで俺を見るものだから、俺の理性はその時点でゲームオーバー。
「…俊介……?」
瑠花が俺の名前を呼ぶと、周りにあった木々が大きく音を出して揺れた。
もうすぐ―…春は終わる。
桜の季節はさようなら。
また来年会えたら…会いましょう。
桜は青くささの残る葉っぱに生まれ変わる。
俺はゆっくりと呼吸をする。
「………瑠花が好きだ」


