無我夢中に走った。
目的地は決まっていた。
告白するならあの場所がいい。小さい頃から決めていたんだ。ブランコに乗りながら告白したかった。
あの夢、そろそろ叶いそうだよ。
じゃあ夜空に託したあの願いは?
―…瑠花のウェディングドレス姿が見れますように。
これはもうちょっとあとかな。
神様、俺にほんの少しの勇気を。
息が切れる。
そんな弱い体を抱えて俺は走った。
こんな体力無かったっけと自分の運動不足に悩まされた。
もっと普段から鍛えていれば良かったな。
俺は走りながらカバンの中から携帯を探し、瑠花に電話をかけた。
今度は「それだけ?」なんて言わせないよ。
『なによ、今度は誕生日を聞きたいわけ?誕生日なら知ってるでしょ。それとも星座?』
電話の向こうの瑠花はやはり怒り口調だった。
俺は乱れる息を抑えて言葉を並べていく。
「瑠花、今から来い。天体観測をしたあの場所に。憶えてるだろ?分かったな?今すぐだぞ」
俺はこれだけ伝えて電話を切った。
もし明日瑠花を失ったら。
昨日言っておけば良かったと後悔しないように。
本当だったらもっと早く言いたかった。
でも勇気が足りなかったんだ。
瑠花を取られたくない。
瑠花の全てが欲しい。
ごめんね、母さん。
頼むよ、母さん。
息子の我が儘くらい聞いてよ。
青虫だった俺に、綺麗な翼が生えた。
それは七色に輝いていて、俺はキミのもとに飛んでいく。
キミを背中に乗せて青い空を飛び回るんだ。
そうしたら笑ってくれるかい?


