この日、自分にはないものに気付いてしまった。
ここから運命は狂っていく。
翔太の言葉の意味を追っていこうとする。
翔太は「知っていた」と言った。
ということは満里奈と修平が付き合ってるのを知っていたってこと?
それが本当ならどこでその情報を?
そして昨日の涙は?あれは演技?
あのときの瑠花は完璧演技だったけれど翔太まで?
それは見抜けなかったよ。
不覚です。
翔太は近くにあったクマの人形を手にとった。
そのクマの人形は肌触りがいいと少し前に評判になった人形。翔太に抱かれるクマは心地良さそうだった。
「翔太…どういう…」
掛け時計の針の音が気になってしょうがない。
もうすぐ12の位置までそれは来る。
話の途中でコミカルな音楽が鳴られたら苛立ってしょうがないだろう。
それまでに真相を。
「…僕が満里奈と出逢ったのは去年なんだ。中学三年生のとき…塾で。そのとき満里奈に一目惚れしたんだ」


