乾ききった風は俺の体をすり抜けていった。
その空気は冬のはじまりの匂いに似ていた。
でも今は春真っ盛り。
今日は何だか冷え込む。
「俊ちゃん、瑠花ちゃん…このことは誰にも言わないで。誰かに知られたら私たちはずっと一緒にいられなくなる…だから…」
この時やっと口が開いた。
閉ざされた唇の隙間から冷たい空気が入ってくる。
その空気が体内の空気と中和され、俺に生きていると実感させた。
俺、生きてる。
じゃあ何が出来る?
「…誰にも言わないよ。」
「俊ちゃん…」
「でも…俺さ、そんなに心広くないから応援はできるか分からないけど見守ってるよ。満里奈がどうしても修平がいいって言うならそれ以上は何も言わない。言う資格ないからさ…」
「瑠花も言わないよ。満里奈の恋愛だもん。恋愛をするのに他人なんか関係ないでしょ?」
「瑠花ちゃん……二人ともありがとう…」
そして満里奈は嬉し涙を一粒溢した。


