「ちょっと部屋行ってもいい?」
「いいわよ、上がって?」
渓斗のお母さんに了承を得て俺は家の中に入った。
渓斗の部屋の前に行き、トントンと二回ノックをする。
「渓斗?俺、俊介だけど…開けてくれないか?話したいことあるんだよね」
こう言って少し経つとカチャンとドアのカギが開く音がした。俺はそれと同時にドアノブに手を掛ける。
そしてゆっくりとドアを開けた。
目の前に広がったのは黒い空気だった。
やはり俺の思った通りの世界だった。
「………何?」
暗い部屋から渓斗の声が聞こえる。
その声もやはり元気がなかった。
「電気つけるぞ」
俺は手探りで電気のスイッチを入れる。
一気に明るくなる部屋。
部屋が明るくなった途端、俺は息ができなくなった。
広がる光景に目を丸くさせる。
なんだよ、これ。
そこにあったものは床一面の紙切れだった。
そしてある文字が目に映る。
“俺は生まれてこなければ良かった”


