せっかく渓斗の優しさで少しは回復したというのに。
午後の授業もダメージを受けたままだった。
もう直らないのかな、なんて…
渓斗と図書館にいたときはグレーだった空も今では青かった。そうやって元の色に簡単に戻れたらどれだけ楽なのだろう。
俺の中には太陽は存在していないのか。
もし存在していたらこんなにも簡単に気持ちを変えられることだって出来るのに。
「こら、矢吹!寝てないでちゃんと聞いてなさい!」
歴史のまだ若い先生が体を伏せている俺に注意をした。
先生…違いますよ。
寝てはいないんです。
ただ心が痛いのです。
そして心は直らないまま学校が終わった。
空は茜色に変わっていた。
その色を見たらほっと…できるわけがない。
片付けをしている時に思い出してしまったのだ。
雅也くんと瑠花が一緒に帰る約束をしていることを。


