「渓斗…顔色悪いよ。腹痛いとか?」
「別に何でもないよ。そろそろ…教室戻ろう…」
そう言って静かに立ち上がる渓斗。
そんな渓斗にそれ以上何も言えずにいた。
深く聞かない方がいいと思ったから。
もしかしたら本当に腹痛だったかもしれないし。
並んで教室に向かっている途中、ちらりと渓斗を見ると体が小刻みに震えていた。
「渓斗…大丈夫か?」
渓斗の肩に触れようとしたとき、渓斗が俺の手を振り祓った。痛くは無かったけど驚いた。
「渓斗?」
「触るな…大丈夫だから。よくあることだし…」
「そっか…まじで具合悪くなったら保健室行けよ?」
「あぁ……ありがと……」
この日から俺は渓斗の様子がおかしいと思っていた。
でも渓斗が「何でもない」と言うから気にしないフリをしていたんだ。
あの光景を見るまでは…。


