「ここの学校じゃないよ。他校の人だよ」
「どれだけ付き合ってたんですかぁ?」
「えーっと…1年半くらいかな」
「よりは戻さないんですかぁ?」
「戻らないね。彼女がそう言っても断るかな。この歳になると遊びで恋愛したくないからね」
またやられた。
何を言っても無駄ってことか。雅也くんはきっと自信があるのだろう。
瑠花を自分の物にできるって。その自信、俺にも分けてよ。
ダメだ、涙が出そうになる。
こんなときに泣きそうになるなよ。
でも目の前で好きな人が奪われるのだけは見たくない。
「あっヤバい。忘れてた!俊介、俺、図書館で借りたい本があったんだ。天体の本。一緒についてきてよ」
すると間に突然入ってきたのは今まで黙っていた渓斗だった。渓斗は立ち上がり俺を見下ろす。
太陽と渓斗が視界に映った。
渓斗が神様に見えたんだ。
きっと苦しむ俺を助けてくれたのだろう。
「あ…うん。いいよ」
大打撃を受けた心はボロボロだった。
だけど渓斗の優しさで少しだけ直った気がしたんだ。


