翔太が俺の腕を掴む。
俺はそれに素直に従った。
仲良く会話する二人をいつまでも見ていたって夢じゃない限り醒めないか。
やっぱり俺が素直にならなきゃダメってことだな。
「うん、行こ…じゃあな満里奈。」
俺は満里奈に別れを告げて教室に戻った。
椅子に座った途端、放心状態となる。
視界と脳がぼーっとし、何も考えられなくなる。
フラッシュバックするあの光景。
消しゴムで消せたらどれだけ楽なことか。
「早く言えばいいのにさぁ」
机に体を伏せて甦るあの光景を阻止する。
目を閉じるとそこは真っ暗な闇だった。
「瑠花を失うのが嫌なんだよ。もし告白して瑠花が離れたりしたら…俺は生きていけない…」
生きていけないは大袈裟かもしれない。
でも瑠花を失うのは嫌だった。
「その言葉、僕に言わずに瑠花ちゃんに言いなよ」
「分かってるよ。でももう少し時間がいる…」
「そっか…まぁ焦らずいきましょうよ」
翔太が頭をポンっと触った瞬間、授業の始まるチャイムが鳴った。


