「今日の朝、渓斗くんがいなかったってことは瑠花ちゃんと一緒に来たってこと?」
右手の熊太郎と左手の熊太郎を操りながら翔太は言った。
俺は携帯を机に置き「うん」と頷く。
すると翔太はゆっくりとこちらを向いた。
「それでさ、なんでそんな勿体無いことしてるの?」
「え?何が?」
「僕さ、今でも驚いてるんだよね。まさか入学式のときに見た可愛い子が俊介くんと渓斗くんの幼なじみでさ。しかも俊介くんは瑠花ちゃんのこと大好きでしょ?」
「うん…だから?」
すると次に翔太がため息を溢した。俺のため息でも移ったのか。
冷えきった瞳で俺を見る翔太。
「いくらでもチャンスはあるのにどうして俊介くんは言わないのかな。言わなくてもいいから行動に移してみるとかさ」
あぁ、さっきのため息は呆れたという意味か。
俺と全く違う意味のため息だった。


