「……捺様」 突然一人の生徒が小さく呟き、一歩私達に歩み寄った。 「……灯夜(トウヤ)」 目の前の少年を見て、火伏さんが声を漏らす。 この灯夜と呼ばれたその少年を……私は知っていた。 あの学校で、小金井家の生徒達と言い争いをしていた生徒だ。 彼は真っ直ぐに火伏さんを見つめたまま、悲しそうに瞳を揺らしている。