「巫女が……いなくなってしまったから?」 その私の呟きに、男が小さく頷いた。 「そう、お前が七宮拓郎に浚われたそのすぐ後に、先代巫女は亡くなった。それからは結界は力を失い続けるだけだった。鬼が力を取り戻し、そして最近度々人を襲う様になった。鬼をもう一度封じる為に……どうしてもお前が必要だったんだ」 「……私には……何も出来ない」 「巫女はこの皇楼に居るだけでいい。それだけで結界に力を注ぐ事が出来る」 男のその言葉に、表情を曇らせたまま静かに俯いた。