「例えばその、カーディガンの下の、ニットの更に中とか」
「……馬鹿」
「男なんてそんなもん」

 知らない、と窓の方へ目をやった。テーブルに肘をついて、頬に当てた手のひらは、そこが熱を帯びていることを感じている。窓ガラスには私たちが映っている。にこにこ(あるいはにやにや)と、私が諾と答えるのを待っている横顔が映っている。
 息を一つ吐いた。全く。可愛いのはどっちよ。
「外、出ようか」
「お」
「勘違いしないでよ、私が見せたいものはもう見せ終わっただけ。あとは秋しだい」
 我ながら、甘い。

 タクシーを待ちながら触れるだけのキスをする。そしてしっかりと手を繋いだ。
 どうしようもないくらい、秋が好き。

(了)