「ああ、」
 先に落胆のため息を吐いたのはあなただった。
「七十パーセント、信じてたのに」
 空からの、細い針金のような雨。モネの絵の美しさの、余韻に浸りたかった心に穴を開けていくようだ。

「どうする?」
「傘ならあるけど」
 鞄を開ける。折りたたみ傘を取り出す。
「何でもバッグ」
 あなたはこちらを見て笑った。

*

 濡れた広い肩を拭いてあげようとすると、また笑われた。
「自分も、半分濡れてるって分かってる?」
 ああ、本当だ。
「そのカーディガン、大切なんでしょう?」

 街角の喫茶店でホットコーヒーを二つ頼んだ。窓際の席で、雨雲が過ぎるのを待つ。
「寒くない?」
「大丈夫」
 わたしを気にかけながら、角砂糖をカップに落とした。もう三つ目だ。一口飲んで、一つ落とす。そういう飲み方をする。
「甘くないの?」
「甘いよ、当然」
「男の子なのに」
「甘党なんだよ」