秋が好き。

 ニットの半袖のセーターの上に、お気に入りの青いカーディガンを羽織った。綺麗な花柄のスカートに、わたしが持っている中で一番高価なパンプスを履いた。夏の暑さでずっとまとめていた髪を、今日は下ろして、丁寧に櫛を通す。

「一体、誰とデートなんだ」
 あなたは笑う。
「TPOに合った服装なだけよ」
 わたしは返す。

 今日は美術館で印象派の展示を見て、近くのカフェに行き、夕暮れの街を歩く。そういうプランだ。それなのに気勢をそぐようなことを言われて、わたしは首を傾げる。

 かく言うあなたは、深みのある赤のチェックのシャツに、落ち着いた色の細身のジーンズ。カジュアルな革靴はいつも通りだけれど、とても似合っている。

 待ち合わせた駅を、涼しい風が抜けていく。
「なに、おれの格好、変?」
 まじまじと見ていたせいか、あなたは苦笑混じりで訊いた。ううん、首を振る。
「行こうか」
 歩き出した、その腕を掴んで歩きたい衝動をどうにか堪えている。年下の恋人というのは、全く、可愛くて仕方ない。