出会いは、ちょうど今日のような、空の高い日だった。
 場所は大学構内のどこかのベンチ。今よりは短いけれども、それでも長い髪を風に流し、細身のパンツに身を包む彼女を見つけた。気怠そうに煙草を吹かすその姿は凍てつくように恐ろしく、美しく。
 見とれていると、彼女と目が合った。僕は気まずくなって、彼女の指にある煙草に目を逸らした。その細く短い筒の、先から立ち上る煙に。煙の上り行く空間に。その先の、澄んだ青空に。

 ふと気付くと、彼女も同じ空を見上げていた。


 その頃の彼女が何を考えていたのかを、僕は知らない。あんなに暗い目をしていた理由を知らない。けれども彼女は僕の傍にいることを選んでくれた。
「だから空は青くても、その下に雲を置いて自分の姿を隠すのよ。見られたくないところを隠すの」
 いつか彼女が言っていた。話の流れは覚えていない。
「見せたくないなら見ない。その姿全てが空なんだから」
 僕はこう答えた気がする。
 俯く代わりに笑うことにしたと言う。彼女はまだ雲を持っているのだけれど、そのことに対する僕の意見はずっと変わらない