運命、と声を弾ませて囁いた憬子の声が蘇る。私たちの出会いは運命だった。憬子の死は偶然だった。じゃあ、貴ちゃんは? 憬子、憬子はずっと貴ちゃんのことを想っていたんだね。

「……あんたはここで生まれたんだから、住まなくっても、たまには戻ってくるのよ」
 母に送られて、東京行きの電車に乗った。別れ際の母の言葉に曖昧な返事をした。電車が動き出す。

 すぐに大きなカーブに差し掛かる。視界の端に、ひまわりの丘が見えた。夏の終わり、そこはくすんだ色で光っていた。



おわり